だけど本当は、きみが最初で最後の恋


そうだ、ちょっとだけふたりきりにしてあげよう!手伝ってもらってるお礼だよ。


「あたし、ちょっとお隣りさんにごあいさつしてくるね」


立ち上がって、用意しておいたちょっと値の張るフェイスタオルと昨日のプレッツェルを持つ。


「え、あいさつ?」


ふたりが目をまるくする。ふつうしない?ああ、もしかして心配してくれてるのかな。ご近所トラブルとかあるもんね。


「心配しなくても大丈夫だよー。なんかママがお隣り安心だからねって言ってたから、たぶん良い人なんだと思う!」


「「(そりゃまあ、心配はないけど……)」」



やっとひとり立ちしたんだもん。こういうこともしっかりやらないと。

何もなければ大学4年間はここで暮らすんだから ご近所付き合いって大事だと思う。


ピンポン、と呼び鈴を鳴らすとすぐにドアが開いた。


「あの!はじめまして、隣に越してきました永作と申します。こちら、つまらないものですが…よろしくお願いします!」


はっ!勢い余ってドアが開いた瞬間お辞儀してしまった。緊張しちゃったんだもん。でもちゃんとあいさつできたよね。


「え、差し入れとかとーかにしては気が利くじゃん。タオルもちょうど欲しかったし…いただきまーす」

「ちょっとあたしにしてはって何?いつでも気遣いしてやってんでしょ?」

「ん、これうま!」

「ちょっとこんな玄関先で食べないでよ!せっかくラッピングしたのに─── って、は!?!?」



な、な、な、な、な!


なんで隣の部屋に、成咲がいるわけ……!?!?


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