だけど本当は、きみが最初で最後の恋


だけど無情にも、あたしに魔法なんてものは使えるはずもなく。



「起きてるだろ」

「……」

「狸寝入りすんな」

「ぎゃ!」


頭までふとんをかぶったからだろう。足がむき出しになっていたらしい。

冷たい手が足首を包む感覚がして奇声がこぼれる。


「相変わらずくすぐり弱いな」

「うるさいうるさい!病人になんてことすんだよ!出てけっ」

「オマエが風邪ひくとかめずらしすぎて気持ちわりーなって思って来てやったんじゃねえかよ」


気持ちわりーって思われながら見舞われるなんてイヤなんですけど!

成咲って本当に、本当になんなんだろう。大きらいすぎる。

ふつうに、どう考えても、どんな角度から見ても思い返しても何しても大きらい。その感情は何も変わらないのに。



「おい聞いてんのかよ」


足をくすぐられる。おいやめろ。離せ、あたしに触るな。


「ぎゃーははっ、いい加減にしろよバカ!!」

「ぐは」


がまんの限界で、飛び起きて憎き顔面にパンチを入れる。きれいに決まった。ぐはって。うける。

とうとう顔を見ると、頬を抑えていつも通りのバカ面を晒していて悩んでる自分の方がバカに思えてくる。


ますます昨日の自分が許せない。



「なんだよ!元気じゃねえかよ!」

「元気じゃないわ。今ので熱上がったわ」


自分の行動が理解できなくて知恵熱だよ、知恵熱。頭がぐらぐらする。どうせ大したことないですよ。だから来なくてよかったのに。

会いたくなかった。できることなら金輪際。


「もう学校いきなよ。あたしも明日には行けると思うし……」


…え、なんか距離近くない?

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