だけど本当は、きみが最初で最後の恋



成咲が近づいてくる。昨日のようにベッドが軋む音がして、心臓があわただしく動きはじめた。

なに、何が今起こってる?


眉を寄せ、やけに心配げな表情。

さっきまで足をくすぐっていた手が今度は額を包む。

大きな手。



「もしかしておれのがうつった?」


「……っ」



昨日の自分の行動が脳裏によみがえってくる。ちょうど、このくらいの距離感。そこからが大問題。破天荒。波乱万丈。大事件。コ◯ンくんも困ってしまうほどの迷宮入りの難問。


モテに命をかけてカッコつけて猫をかぶって何かを演じているみたいな成咲。

そうじゃない成咲を知っている。大きらいな成咲を、あたしだけは知っている。そんな感情があたしを突き動かして、それで…それで……。



う つ っ た ?



「そんなわけないでしょ!?近づいてこないでよ!うつったらまたアンタが熱出るでしょうが!」

「オマ、暴力的すぎんだろ」

「調子にのらないで!なんでアンタにうつされなきゃならないの……そんなに弱くないわ」


これはただの知恵熱。アンタのせいには変わりないけど、あのキ、キ、キ……が原因なわけじゃない。


パンチを2度くらった成咲は怒った顔で「もう二度と心配しねえから!」と出て行ってしまった。

心配なんていらないし。

そんな、らしくないこと、いらないし。


「調子がくるう…」


深いため息をついてみたけど落ち着かない。


頭痛がする。こうやって、振り回されるのはいつもあたしなんだ。


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