だけど本当は、きみが最初で最後の恋
次の日の朝、芸能ニュースに千葉◯大くんが出ていた。正直言ってどこから見てもカッコいい。
ママは彼を見て「成くんにそっくり〜〜」とテンションが上がっている。
似てるけど、成咲のほうが目つきは悪いし、茶髪もミドリ髪も似合わないし、あんな柔らかい雰囲気出せない。でもまあ頰はアイツのほうがふにふにかもなあ。で、くちびるは……いやいや、テレビの向こうのお方のくちびるの感触なんて知らないし。いやいやいやいや、成咲のだって記憶から抹消したから知らないし。
落ち着かない。そのおかげでヤツがインターホンを押す前に支度ができた。
今日はフィッシュボーン編み込み。サイドに流す髪型。
あたしだって彼氏ほしい。
そうなれば成咲にあんなワケのわからんことをする理由がなくなる。彼氏づくりのためにまずは身だしなみだ。
成績も良いほうだし、スポーツもそれなり。目立つわけじゃないけど目立たないわけでもないと思う。性格は成咲よりはかなり良い。
彼氏くらいできるはず。
一夜考えた結果、あたしに足りないのは恋だと気づいた。それさえあれば成咲との関わり自体薄れるにちがいない。
「え、今日雪降る!?」
第一声がそれかよ。
玄関前で待ってると、目つきの悪い瞳をまんまるに広げたバカ面がバイクに乗って現れた。攻撃したい。
「おはよ。ちなみに今日は4月の快晴」
「ハヨ。オマエがおれより早いなんてめずらしいこともあるんだな」
身体より大きいんじゃないかと思うくらいゴツゴツしたバイクを押して歩く。似合わない。