だけど本当は、きみが最初で最後の恋
我が家の駐車場にバイクを留める背中を見て、なんでこんな気持ちになるんだろうと思った。
「熱は?」
「もうないよ」
「なんか、今日はやけに凝ってんな」
編んだ髪を、なんてことないって顔でするりと撫でられる。
ああ、その指へし折りたい。触るなバカ。
「毎日毎日めかしこんで、そんなモテたいのかよ」
それは、こっちのセリフだ。カッコばっかりつけて目立って本当にモテて自分の自分じゃない姿を気に入られて、こんな行動まで覚えて。
ほらね。いつもあたしだけが振り回される。
「モテたいわけじゃなくて、はやく彼氏つくって、アンタじゃない人と登下校したいの」
いつも心臓、痛い。
「ああそうかよ。まあ、がんばれば」
ぶっきらぼうな味気ない言葉。予想はしてた。
「言われなくても」
毎朝の身支度。なるべく笑っていよう。なるべく誰とも話してみよう。なるべく学校のイベントごとには参加しよう。なんて努力をしてもなんでかな、彼氏ができない。
がんばればなんて、言われなくてもやってるのに、叶わなくてつらい。
いつの間にかあたしの頭の場所に肩がある隣の男。大きらいなやつ。
「っ、橙花!」
小さく発された声と同時に腕がぐっと後ろに引き寄せられる。あたしの横をおじいちゃんが力なく自転車をこぎながら通り過ぎていく。
「離れて歩くなよ。周りにメーワクだろ」
「すっ、み……ません、でした」
だったら他の女の子にするみたいに道路側歩くくらいの優しさ見せてみろってんだ。