だけど本当は、きみが最初で最後の恋
なによ。こっちはアンタとの距離が近ければ近いほどメーワクだってのに。
隣にいなくなってくれる日は来るんだろうか。
乙女思考な姫春にこの関係を無くすおまじないでも教えてもらおう。
またこの前みたいな不可解な行動を自分がしでかしてからじゃ遅い。
はあ…本当に落ち着かない。コイツに対してこんなに気持ちが乱されるなんて癪だしくやしい。
あんなことした自分を呪いたい。あの日に戻れたらすやすやのん気に寝てる顔面ぶった叩いてやるのに。これ何回も思ってる。
「そういえば新刊出たよ」
「な!本当に!?読みたい!」
新刊、とはあたしたちが好きで読んでいるシリーズものの推理小説。
もう8冊目になるかな。小学生の頃に図書室でハマって、そうしたらコイツもハマってて、いつも交代で集めている。
「うん」
「どうだった?おもしろかった?」
「おもしろかったよ。でもなんか、今回のは恋愛色が異様に強かった」
恋愛、と聞いて若干気まずいような気持ちになるのはなんでだ。
その推理小説は、主人公の売れない探偵を軸に、その幼なじみであり敏腕刑事のリオとのなかなか進まない両片思いも魅力のひとつとされている。
リオのことが好きなくせに毎回犯人や犯人を取り巻く女性にほだされる主人公のへたれさと情けなさに共感を得る人も多いらしい。