だけど本当は、きみが最初で最後の恋
目の前のふたりにそんなことを思われているとはつゆ知らず、あたしたちは今日も、きっと明日も、これからもずっと、何かを隠すようにけんかばかりするんだろう。
「いらっしゃい、姫春ちゃん、とーかちゃん」
弥生が頼んだものを持ってきてくれた店員さんは、なんとこの前会った姫春の彼氏の友達だった。名前はたしか……。
「あ、樹良くん。ここでバイトしてたの?」
そう、樹良くんだ。
「そうだよー。ゆっくりしてってね。とーかちゃんも」
名前を呼ばれたと思って顔をあげると目配せされる。
「どうも……バイトがんばってください」
「ありがとー。あとで勉強会の差し入れするね」
そう言って裏に戻っていく。
かっこいいな。顔が。気さくだし。
そんなことをぼんやり思っていると、隣から「誰?」と聞かれた。
「姫春の彼氏の友達だよね」
「うん。すごくいいひとなんだよー」
そうらしい。たしかに、お世辞にしろ褒めてもらって嫌な気はしなかったな。
「なんで姫春ちゃんの彼氏の友達とオマエが仲良さそうなんだよ」
「なんでって言われてもね。でもふた言くらいしか喋ったことないよ」
それを仲良さそうって思ったってことは、彼の雰囲気のせいだと思う。
「浮かれんなよ」
「……は?なんの話?」
「男の知り合いができたからって浮かれんなよってこと」
かっちーん。
いやいや、…はあ?