だけど本当は、きみが最初で最後の恋
「浮かれてないし。なんでもそういう方向にしか考えられないわけ?」
こっちは1ミリも色恋に持ってってないってのに。
樹良くんのことなんてさっきまで顔も名前もわすれていたし、わすれたことすらわすれていた。気にもなってないのになんなんだコイツ。
「ちょっとモテるようになったからって…彼女いたことないくせに」
予備校のことは知らなかったけどさすがにそういうのは知っている。
モテるくせにどうしてかいつも告白を断って、そもそも告白になる前になんか、遠ざけるような感じにする。モテたいくせに恋愛不器用かよ。ダサ。
「オマエは恋愛とか耐性ないんだからああいうのが急に現れたら舞い上がっちゃうだろ」
「いや…バカにしてんの?アンタとちがってそんな単純な人間じゃないんだけど」
「は、どーだか」
バカにバカにされるほど嫌な気持ちになることってないよね。
さっきまでお礼におごるよ、とか、久しぶりにいい空気だったのにコイツはしょうもないことで崩してくる。けんか生み出すのに関しては天才かもね。
「アンタだって予備校の女の子にデレデレしてたじゃん!」
「は?なんの話だよ」
「とぼけないでよ。一緒にどっか行くの見かけたし。ね、姫春」
せっかく見て見ぬふりをしてあげようと思っていたのに。
姫春を巻き込むと「あ、でも、何か事情があったんじゃないかな」と優しい回答が返ってくる。成咲に優しくしなくていいよ優しい子すぎる…!
「事情?だらしなく顔緩ませてたけどね」
「いや、うざいわ」
「はい、すぐそういう悪口に逃げるの、ダッサ」