だけど本当は、きみが最初で最後の恋
こうして毎日毎朝並んで学校に行く。ついでに言うと帰りも一緒。毎度なこの疲れるけんかはしょうがないからいい発声練習だと思うことにしてる。
人生に降りかかるメーワク。
「はあ?好きで見てるわけじゃねえっつの。本当はオマエなんてどーでもいいし本来関わりたくもない」
ム。なんかむかつく。なんであたしの気持ちをアンタまで抱いてるんだよ。
「じゃあ朝迎えなんて来なきゃいいでしょ。頼んでないし、めんどくさいし、ピンポンピンポンうるさいしアンタの顔を朝から見るストレスで早死にしそうなんだけど」
「葉子さんの頼みなんだから仕方ないだろ。オマエの頼みだったら土下座されてもやらねーわ」
ママのせいかこれは。…なんて知ってたけど。
家から歩いて25分。
今日もコイツのせいで倍以上の時間がかかっているような疲労感で授業に支障が出そうだ。毎度なことなのに慣れない。
なんとなく成咲の革靴を追い越して先に門をくぐることだけがオアシス。なんて健気なんだ自分は。
だけどその癒しは長く続かない。
またしても成咲…コイツのせいで。
校舎に近づくにつれて頭上が騒がしくなってくる。窓が開く音がちらほら聞こえてきたらそれがオアシスタイム終了のお知らせ。
「成くーん!」
「おっはよーう♡」
「わあっ、伊野センパイ来たあ」
「カッコよくて、かわいー!」
…どこがだよ視力いくつだよ我が学園の女の子たちめ。教えてくれ。
じろりと見上げるとドヤ顔を堪えきれず鼻の下を伸ばしながらギャラリーに手を振りはじめるバカ。成咲と書いてバカと読む。