だけど本当は、きみが最初で最後の恋
優しいような、優しくないような、わからない温度だった。
「成、っ」
どうしたらいいかわからず、ただこの場から消えちゃいたくて、無理に立ち上がろうとした。
それをまた後ろ手に捕まえられ、結んでいなかった髪を持ち上げられる。
あらわになった傷あとに、押し当てられたくちびる。
「や、─── ん、ぅ」
振り向いて抵抗しようとすれば、また息をつく間もなく角度を変えて何度も熱が合わさった。
あたしがしたものなんて、おままごとにもならない。コドモだと思っていた幼なじみは、あたしよりもずっと、いろんなことを知っているのかもしれない。
どれくらいそうしていただろう。
こぼれる吐息にくらくらした頭のなかで、なんで、どうして、と、言葉にならない問いかけがいくつも浮かんでいた。
少しだけ距離ができる。
さっきまで隙間もなく自分のそれを重ねていたあたしのくちびるを、雑な親指が拭ってきた。
「は…泣き虫とーか」
誰のせいだ。
そんな気持ちで、緩んだ成咲を突き飛ばし、今度こそ逃げるように保健室を飛び出した。
──── 何が起きたの。
寝込みじゃない。
お互いに何かしらの意思を持った、理由のない、2度目のキス。
それはあたしたちが今まで変えられなかったかたちを、いとも簡単に解いた。