だけど本当は、きみが最初で最後の恋
一睡もできなかった……。
目をつぶれば至近距離で見たアイツの顔が浮かんでくるし、目を開ければ首のうしろ、手首や二の腕、頬、そして口に感じた体温が蘇ってきて ───
「あー!!!」
心臓がどどどどどどって、もう今まで生きてきた中で一番はやく脈打って、頭のなかが昨日の出来事でいっぱいになって、泣きたくなるし、叫びたくなるし、じっとしてられないし、ちょっと震えるし、気を乱されてどうしようもない。
そんな状態で迎えた朝。
いつもよりずっと早く起きてしまったから、校則違反だけど普段より華やかな化粧を施す。
誕生日に姫春からもらった香水だってつけちゃう。お花とせっけんが混ざったようなにおいのやつ。
髪はもう結ばないって決めたからしっかりストレートアイロンで伸ばした。さらさらうるうるつやつやになって自分の気持ちが満たされてく。
制服を着てリビングに入れば、昨日からちょっと気まずいママと遭遇した。
「…おはよう」
「…今日も早いのね」
「……」
おはようって言ってるのに。
ママとけんかなんてめったにしないから、居心地がわるい。だけど引けない。…成咲と顔合わせるのこわいもん。
それにアイツ……あんな、あんなキ、キ、キ……どこで覚えたんだろう。
あたしが知る限り彼女なんていたことない。
そりゃモテるようにはなったけど、あたしの知ってるアイツは付き合ってない子とキスしたり─── したわ。あたしと。
ひえ…っ。
あたしたち、あんなオトナみたいなキス、なんでしちゃったんだろう…!?
今にも顔が火を噴きそう。はずかしくて生きてるのもつらいって気分。