だけど本当は、きみが最初で最後の恋



「弥生…おれ、歩けないからおんぶして」


何甘えた声出してんだか。情けない。


「とーか、なにしたの」

「だって聞いてよ、いつものことだけど」

「いつものことならいいや。成、自力でがんばって。でも早くしないとチャイム鳴るよ」


いいやって。めんどうをかけてこないところがすでにアイツとは違う。


あたしは弥生のほうがぜんぜん好きだ。というより片方のことは大きらいなんだけどさ。

だから弥生があたしと付き合ってくれれば一番いいのになあ。彼女だって今はいないみたいだし。なんて思いはするけど、今さらナイか。



「オマエら待てよ!痛くて歩けねえんだよっ」

「バーカ。自業自得なんだから諦めてゆっくりおいで、ムリはするもんじゃないよ」

「そもそもテメェの朝のしたくが遅えんだよ洒落っ気づいてんじゃねえクソボーリョクドンカン女!」


アンタもな。


クスクスと柔く笑う弥生の腕を引き教室に向かう。

どんなにモテようがかわいがられようが、アンタに味方はいない。


教室に入る。弥生と同じクラスになったのは中3以来久しぶりだったけど、あのバカとは幼稚園年中さんから高3までただの一度もクラスが離れたことがないから気味のわるい縁だ。


縁を切りたい。エンガチョもお祓いも100回以上確実にしたけど効果なし。

早くチャイム鳴って先生来て名簿読んでほしい。キック喰らって動けなくなって遅刻するの何回目?反射神経わるすぎでしょウケる。

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