見捨てられたはずなのに、赤ちゃんごとエリート御曹司に娶られました

明るい声と笑い声が飛び交っているテレビ画面をぼんやり見つめている私の元へ、母がキッチンから舞い戻ってきた。


「そうそう。見かけたから結衣の好物も買ってきたのよ。ちゃんと食べなさい」

「……はーい」


テーブルに置かれたのは、子供のころから好きだったカツサンド。母の気遣いが嬉しくて、すぐさま手を伸ばす。

しかし、開封して漂ってきた香りを嗅いだ瞬間、動きが止まる。私はゆっくりとカツサンドをテーブルに戻し、眉根を寄せる。


「気持ち悪いの?」


無意識に口元を抑えたのは、母が言う通り、急に気持ち悪くなったからだ。


「……だ、大丈夫」


和哉さんを諦められなくてずっと思い悩んでいる状態が続いているため、体に負担がかかっているのかもしれない。

はやく気持ちを切り替えなくちゃなぁと考える私に、母が低く囁きかけてきた。

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