見捨てられたはずなのに、赤ちゃんごとエリート御曹司に娶られました
そして、和哉さんはもう、他の女性と別の新しい道を進んで行ってしまっているかもしれないことも。
私自身、お腹の子の父親である彼を憎みたくないのと、心の中にある彼との温かな思い出を壊したくなくて、言葉にはしたくなかった。
私のそんな思いが伝わって言ったのか、次第に誰も和哉さんのことには触れなくなり、家族みんなで育てましょうといった雰囲気へと変わっていった。
出産に関しては不安もあったが、母親が傍にいてくれたことで心強くもあったし、寡黙な父や陽気な弟からも赤ちゃんの誕生を心待ちにしているのが伝わってきて、嬉しくなる。
家族の精神的な支えにも感謝しながら、恵まれた環境の中で出産の準備を進め、そして出産予定日より二日遅れで、私は元気な男の子を出産した。
ひとり親で育てていくことへの不安も分娩の痛みも、産まれてきた子、勇哉の顔を見た瞬間一気に薄れていく。
代わりに、小さくてか弱いこの存在を私が守っていかないとと、強く感じたのだ。
初めての子育てに追われながら、一日一日が飛ぶよう過ぎていき、もうすぐ二年。
あと二週間で、勇哉は二歳の誕生日を迎える。