見捨てられたはずなのに、赤ちゃんごとエリート御曹司に娶られました
寝返りが出来たのもついこの前のような気がしてしまうほど、ここまであっという間だった。
そんな休日ののどかな昼下がり、私と勇哉、そして三歳年下の弟である圭人の三人で、公園で遊んでいると、通りすがりの年配の女性が目尻を下げながら、言葉をかけてきた。
「あら僕、美男子だこと」
私が「美男子だって、良かったね勇哉」と声をかけると、褒められているのはわかったらしく砂場でお山を作っていた手を止めて、勇哉がにこりと笑った。
すると、年配の女性は「本当に可愛らしいわね」と口元を綻ばせる。
父親の譲りの切れ長の瞳に、愛らしい笑みを浮かべる彼は、頻繁に容姿を褒められる。
時々、小さくなった和哉さんを見ているような気持ちになるほどに父親そっくりなので、無理もないだろう。
「バイバイ」と手を振り離れていく年配の女性に小さな手を振り返してから、勇哉は再び砂遊びを始めた。
「大きくなったら勇哉はモテモテだろうな。羨ましい」
ぼやきながら圭人はスマホを勇哉に向けて、いつものように動画を撮り始める。
出産前、甥っ子の成長記録は俺に任せておけと宣言し、その言葉通り、弟は私よりも勇哉の動画を撮りまくっている。