見捨てられたはずなのに、赤ちゃんごとエリート御曹司に娶られました
圭人は「おっ」と目を大きくさせると、そのままスマホを耳に押し当てた。電話がかかってきたようだ。
「わかった。すぐ戻る……はいはい。伝えるよ」と言って通話を切ると、ゆっくりと立ち上がった。
「配達の注文が入ったから戻って来いって。で、おふたりさんも、オヤツの準備できたってさ」
「もうそんな時間か。勇哉、家に帰っておやつ食べよっか」
「おやつ、食べる!」
目を輝かせて砂のついた手を挙げた勇哉の無邪気さに自然と笑みが広がる。私たちは揃って立ち上がり、手洗い場に向かって歩き出す。
「先に戻ってていいよ」
定休日は水曜日なため、休日の今日も店は営業中だ。そしてお酒の配達は専ら圭人の仕事となっているため、あまりのんびりしていられない。
手を洗いながらそう声をかけると、圭人は頷く。
「そうするか。じゃあ俺は先に帰るな。勇哉も、寄り道せずに帰るんだぞ」
小さな頭を撫でて背を向け歩き出したが、「ゆうやもいく!」と泣きそうな声が続き、圭人はすぐに舞い戻ってきた。
「そうかそうか。勇哉は甘えん坊だなあ。みんな一緒に帰ろうな」
嬉しそうに笑いながら圭人が勇哉を抱っこし、抱っこされた勇哉もすっかりニコニコとご機嫌だ。