見捨てられたはずなのに、赤ちゃんごとエリート御曹司に娶られました

家に向かって再び歩き出すと、勇哉がぽつりと圭人に話しかけた。


「ゆうやも、ボールで遊びたかった」

「そっか。じゃあ明日、天気がよかったら、ボールで遊ぼうな」


自分の思いを受け止めてくれたからか、勇哉は嬉しそうに微笑んで、そのまま圭人の肩に小さな手を伸ばし、ぎゅっと抱きつく。

圭人がパパではないことはわかっているだろうけれど、パパの代わりとして甘えている様に見えることが多々ある。

こんな時、勇哉の寂しさを埋めてあげたいけれど、探しても探しても言葉が見つからない。

圭人とは店の前で別れ、私は勇哉と手を繋いで自宅玄関へ。

玄関に入ると、子供服の着替えを手にした母が家の奥からやってきて、うまいこと誘導されるように勇哉は洗面所へと連れて行かれる。

着替えを終え、石鹸で改めて手を洗い、リビングでテレビを見ながら冷たいお茶を飲みつつ、おやつのドーナツを三人でのんびり食べ始める。

公園でよくお酒を買いに来てくれる夫妻と会った話をしていたが、途中で言葉が途切れてしまった。


「どうしたの?」

「え? ……あぁ、私が学生の頃にバイトしていたカフェの近くだから懐かしいなと思って」


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