君じゃなきゃ。
「あとは仕事を優先しちゃうとこに嫌気さしてたみたいで何度かケンカしたし……結婚についても迫られちゃったしね」
「結婚なんてタイミングもありますよね……」
「そうなんだ。もう少し仕事が落ち着いたらって思ってたんだけどね。まぁそんな言い訳するとまた、仕事優先なの?って怒られちゃうけど」
先輩は笑って話しているけどあたしはとてもじゃないが笑えなかった。
だって……先輩に何も落ち度がないと思うから。
「付き合い短いですが……あたしにでもわかります!先輩は浮気なんてするような人じゃない……なのに噂の方を信じちゃうなんて……!」
「相川さん……?」
「こんなにも仕事に一生懸命になっているのに……それを理解してくれないなんて……彼女は先輩の何を見てるんですか?!」
見たことのない先輩の彼女に腹を立て、苦い顔をしていると先輩は肩にポンッと手を乗せて
「そんな顔しないで?」
と、真っ直ぐな瞳にあたしを映して言ってきた。
「相川さんにそんな顔で嬉しいこと言われると……抱きしめたくなる」