君じゃなきゃ。
小さくため息をつきながらエレベーターを下りて出入り口へ足を進めていると、向いから一人の女の子が歩いてきた。
「あ、さくら!今終わり~?」
会社に帰ってきたのは、あたしに向けて右手をひらひら振るメグミだった。
「メグミ!?今営業から帰ってきたの?!」
「そう!疲れた~……。ちょっと上客だったから……愛想振りまいてしゃべりまくってたらこんな時間になっちゃった!」
お客様相手の営業だからよくあることとは言え……定時2時間もすぎた人はなかなか見たことがない。
メグミなりに頑張ってるんだろうな……。
「あっ!ねぇさくら!今から時間ある?」
腕時計を見て今の時間を確認したメグミはあたしに聞いてきた。