君じゃなきゃ。


「よしっ!おいしく入ったかな……」

気持ち丁寧に入れたコーヒーを両手に持つ。

時刻はいつの間にか始業開始時刻を過ぎていた。


うわ……仕事の時間始まってるよ……。

席に戻ったら早く仕事しなきゃ……。


半ば急ぎ足で自分の席へ足を進めていると


「あれ?課長?」


目指した先には企画課の課長が座っていた。


何やら神妙な面持ちで隣の竹下先輩と話をしている。


何の話だろ……。


席に戻るにも戻れず、少し離れたところから様子を窺っていると、先輩の肩をポンッと叩いた課長は立ちあがり、廊下へ出て行った。


もう、戻っても大丈夫かな……。


さっきの急ぎ足とは違い、そろりと足を進めて席へ座る。



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