君じゃなきゃ。


心臓は非常識ながらもその顔つきにトクンと音をたてる。


「な……何があったんですか?」

心臓の動きを悟られないよう、先輩の瞳から目を逸らす。


「どうやら……せっかくリハーサルまで進めたプレゼンだけど……元の資料が古かったらしい……」


ワントーン低めの声で先輩は言った。

その言葉に再び視線は先輩へ移る。


「え?!そんな……!澤田さんに聞いた資料を使ったのに……」

「澤田さん自身も気づかなかったんだろうね。昨日、プレゼンで使う資料を課長に提出したんだ。課長がチェックしてて気づいたみたいだよ……」


資料の情報は最新のものを使わないと意味がない。

……ということは……


「やり直し……だね」

フゥーッと長めに息を吐きながら先輩は言った。


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