君じゃなきゃ。


あたしが隣に立つと同時に健人は聞いてきた。


「……さくら。俺に嘘ついたでしょ?」


わかっていたと言えど、健人の言葉に心臓は止まってしまいそうなほど反応する。



「……ごめん」


もう認めてしまうしかない。

本当のこと言えばわかってもらえるだろうし。


「……定期忘れたのは本当だよ?会社に取りに行ったらたまたま先輩がいて……」

「それで一緒に帰ることになって家まで送ってもらったって?」

「……そう」


健人にあたしの言葉の続きを言われて、うなずくしかできなかった。


「それで俺が許すと思う?」

「……ごめん。でもっ!先輩の前でバレるような態度とったじゃない!」


健人がヤキモチを妬いて先輩の前でキスをしたことなどが蘇る。

それで健人の気持ちは落ち着いたんじゃないの?



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