君じゃなきゃ。


健人はそう言い残して外回りに出かけて行った。


結局話が本題からそれた気がする。


あたしが怒っていることに対しての疑問はどうなったんだろう……。

メグミとの飲みが原因だって、本人気付いてないし。


「そんなに名残惜しそうにしないでよ」


健人の背中が見えなくなっても廊下を見つめるあたしに先輩は切なげな目を向けた。


「名残惜しいなんて!そういうんじゃないです……ただ……健人にも先輩みたいな気づきレベルがあればな~なんて」

「気づきレベル?」

「はい。言わなくても気づいてくれる……ずっと一緒にいたら普通そういうのありそうなんですけどね」



健人は「言ってくれなきゃわかんない」って言ってたし。


確かに言葉にするのって大事だけど……言わなくてもわかってくれるってすごく心が繋がってる気がするのに。


……それがあたしと健人は繋がってないのかな……。


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