君じゃなきゃ。


「さくら!ボーッとしてる!」


空を見上げて立ち止まったままのあたしを、前を行く健人が振り返って呼ぶ。


「アイツのこと考えてた?」

「……少しだけ。でも……好きとか、恋とか……そういうんじゃない」

「でも妬ける。……手、繋いでいい?」

「……?うん、いいよ?」


いつもは聞くこともせず、手を伸ばしてきたり、押し倒したりするくせに……どうしたっていうんだろう。


今日の夜空と一緒。



……珍しい。




繋いだ手が少しだけ震えていた。



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