君じゃなきゃ。


健人に遅れて店の中に入ると奥にある四人掛けの席にメグミが座っていた。

肩まで伸びたこげ茶色の髪をゆるく巻き、まつげをバッチリ上げ、ピンク色の唇をし、相変わらず人形のように可愛い。


あたしを見つけるとメグミは

「やっと来たさくら~!」

口を尖らせながら待ちくたびれた感をアピールしてくる。

「はい、さくらはここに座る!」

そんなメグミの前に座っている健人が自分の隣の席にあたしを招く。


「ごめんね。時間通りに終わる予定だったんだけど……」

「はいはい、もういいよ。さくらが仕事大好きなの知ってるから~」


メグミは呆れながらも「何飲む?」とメニューを見せてくれる。

「今日はウーロン茶にしておこうかな」

「飲まないの?」

「明日も早いから」

「さすがキャリアウーマン!あたしには無理だな~、そんな真剣に仕事するなんて」


茶化すかのようにメグミは言ってくるけど、本気であたしのことを否定したりバカにしたりはしてこない。

理解ある気心知れた友達だ。



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