君じゃなきゃ。
再び暗い廊下に出て更衣室へ向かう。
エレベーターから出てきたときはビクビクしていたくせに、同じ階に人が、しかも先輩がいたということがわかると途端にビクビクはどこかへ消えていく。
「あった~!やっぱりここにあったか!」
定期入れはあたしのロッカーの目の前でポツリと寂しげに落ちていた。
「良かった!これで帰れる~。先輩に挨拶して帰ろう」
今度はキチンと定期をカバンの内ポケットにしまい更衣室を出て先輩のいる課内へ戻ることにした。
「先輩!定期あったのであたし帰りますね~!」
出入り口のドアを開けて暗がりの中、一つ見える明かりに向かって言った。
そしたらその小さな一つの明かりはパチンと音を立てて消えた。