君じゃなきゃ。


あたしが上がって来たままエレベーターは動いてなかったのでボタンを押すとすぐに開いた。

静かな密室に先輩と二人きり。

チラッと横目で先輩の姿を見ると、階の表示を見上げながら「今日は何食べるかな~」なんて独り言を言っている。


こんな遅くまで一人で仕事をしていたというのに疲れた顔一つ見せない。

こんな遅くまで働いていたのにスーツの乱れも髪の乱れも何一つない。



……カッコいい。



あたしの視線に気づいたのか先輩はあたしに振り向いて


「なに?どうしたの?」


なんて優しく笑いかけてくれた。



また……あたしの中でトクンと何かが脈をうった……。
< 57 / 357 >

この作品をシェア

pagetop