君じゃなきゃ。


「まっ……待ってください!」

あたしも先輩に続いて走り出す。


周りなんか見ずに、先輩の背中と電車の扉に向かって。




そして二人同時に駆け込み乗車。


駅員さんの

「駆け込み乗車は危険ですのでお止めください」

というアナウンスに二人して苦笑いした。


遅い時間帯ということもあって電車内はいつもの混雑はなく、広々と座れた。


「すみません……竹下先輩は別の電車ですよね?」

隣に腰かけている先輩を見上げて聞いた。


仕事場でいる隣よりも近い距離。

足が触れそうで触れない。


……もう少し距離開けて座ればよかった……。
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