君じゃなきゃ。
先輩はそんな距離感、何も感じていないのか平然とこっちを向いてくる。
「僕もこの電車で帰れるから。それに相川さんの家から近いんだよ」
「……そ……そうですか?」
「そうそう」
先輩がそう言うなら。
たとえ先輩があたしの家を知らないとしても、
いくら乗る電車が一緒だからって降りる駅は違うでしょってツッコミいれたくても、
飲み会のためにあたしを無理やり早く帰らせるくらいだから、きっとこれも気遣いなんだろうけど……
そういうことにしておこう。
だって……二人の間のわずかな空間がもどかしくて仕方ない。
そのことで頭がいっぱいなんだ。
もう少しあいていれば、もう少しくっついていれば、
こんな距離感、意識せずに済んだのに。