君じゃなきゃ。
先輩とはそれから無言のまま20分の間電車に揺られた。
無言だからって気まずいわけじゃなくて、静かな時間は居心地が良かった。
健人とだったらきっとずっとしゃべってる。
竹下先輩……健人とは正反対って感じかも……。
「あ、あたし次の駅で降りるので」
駅に到着しそうなところであたしは腰を上げた。
「じゃぁ僕も降りるよ」
「いいですよ。このまま帰ってください」
「何言ってるの。僕もいつも降りている駅なんだ。一緒に降りてもいいでしょ?」
先輩は真顔で……でも少し慌てた様子で腰を上げて言ってくる。
その様子を見ていてあたしは可笑しくなって小さく笑ってしまった。