羽柴弁護士の愛はいろいろと重すぎるので返品したい。【番外編 2021.5.9 UP】
(辞めるって言うなら……さっきだった……)
私は部屋を出た瞬間、その場に崩れ落ちた。
いざと言うときの自分の機転のきかなさに泣けてくる。あとでいろいろ反省しても、いざその場に立つとすぐにその判断がうまくできないのだ。
しかし、どれもこれも、羽柴先輩が悪い。
なんでこんなとこにいるのよ……。
って、羽柴先輩が顧問弁護士ってことだよね。でも顧問弁護士なんて、普通はあまり社員と関係ないよね……?
一縷の望みをそんなことに託しながら私はとぼとぼとエレベータまで向かった。
それに辞めるって言うこと自体は、いつでもできるはずだ。
そんなことを思いながら、やってきたエレベータに乗りこみ、1階のボタンを押す。次の瞬間、スーツの男性がエレベータに強引に乗り込んできた。
それが羽柴先輩だと気づくと、私の息は止まり、身体は固まった。そして寒くもないのに、身体はがたがたと震えた。