羽柴弁護士の愛はいろいろと重すぎるので返品したい。【番外編 2021.5.9 UP】
10章:変化

 その日もお弁当を作る時間がなくて、食堂で宮坂さんと昼を食べた。そのあと食堂を出たところで、
「キミ、健人の……いや、うちの新入社員の柊みゆさん、だよね? わかるかな。ホウオウ副社長の鳳一樹といいます」
と声をかけられ、私は驚いて副社長を見上げた。

「……驚きました。私みたいな普通の一社員の名前まで覚えていらっしゃるなんて」
「もともと人の顔の物覚えは良いしね」

 ふふ、と楽しそうに副社長は笑う。それから、

「今日さ、健人に用があってちょっと電話したけど、やけにご機嫌で気持ち悪かったよ」

と小さな声で言った。それを聞いて泣きそうになる。
 その内容が聞こえていたらしい隣にいた宮坂さんも吹いた。

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