羽柴弁護士の愛はいろいろと重すぎるので返品したい。【番外編 2021.5.9 UP】


「みゆ? どうしたの?」
「ごめんなさい、今日仕事はやいんだった。もう行かなきゃ。着替えるから出て行ってください」

 そう言って先輩を部屋から押し出す。
 準備をして部屋から出ると、先輩はまだそこにいた。

「送る」
「いらないです」
「でも……」

「いらない!」

 思わず恥ずかしいくらい叫んでいた。
 なにこれ。自分で気持ちのコントロールが効かない。訳が分からない。泣きそうになった。

 その時、先輩が私の手を掴む。
 そして父に、すみません行ってきます、と言うと、自分の車の助手席のドアを開けて、私を押し込むようにそこに乗せた。

 そして、有無を言わさない声で、
「ほら、シートベルトもして」
「ちょ、なんなんですか! いつもひくくせに!」
 
 そう、いつも私が嫌って言ったとき、先輩は引いてくれていた。
 こういう場面で強引にこんなことされたことない。だから私は完全に戸惑っていた。

< 163 / 302 >

この作品をシェア

pagetop