羽柴弁護士の愛はいろいろと重すぎるので返品したい。【番外編 2021.5.9 UP】
静かに車を発進させた先輩と私の会話は、なかった。
二人とも黙りこくる。
会社が近づいてきた道沿いで、
「俺はね、もうみゆとのタイミングは間違いたくないんだ」
と先輩ははっきりと言った。
でも、私はどんどん近づいてくる会社を前に焦っていた。これ以上近づいたら、会社の人に見られるかもしれない。
「もうこのあたりで下ろしてください!」
叫んだ私の声に、車は道端で止まった。私は心底ほっとした。
ちょっと人通りの多い道だが仕方ない。出ようとすると、車は鍵が開かず、出られなくなっていた。