羽柴弁護士の愛はいろいろと重すぎるので返品したい。【番外編 2021.5.9 UP】
「あの時のことは悪いと思ってる、ってことでいいの?」
「もちろんです」
「ふうん。じゃ、どう償ってもらおうかな」
先輩は目の前で楽しそうに笑う。先ほどから羽柴先輩は心底楽しそうだ。その声を聞いていると、お腹の底からふつふつと怒りがわいてきた。
(なにがおかしいの! なに笑ってんのよ……!)
攻撃的な気持ちになって私が羽柴先輩を睨むように見ると、先輩はそんな私を見て、またクスリと笑う。
「やっとこっち見たね。あの時も、その目を好きになったんだよ」
「……」
「先に言っておくけど、これは脅しではない。みゆがみゆの意思で決めることだから」
「どういう……」
「みゆが本当に悪いと思ってるなら、みゆから俺にキスして。あの時の続きだ」
は? と言葉が出かける。でも、目の前の先輩の様子は冗談でもなんでもない顔をして、私を挑発するような目で見ていた。
あ、これだめだ。私の攻撃的な本能が止められない。私の足に力が入るのをみて、先輩は楽しそうに笑った。
「ねぇ、み……」
ゆ、と先輩が言うより先、私は一歩前に出ると、先輩のネクタイを引っ張って、先輩に口づけた。キスなんて、ただ唇を合わせるだけだ。
もう金輪際関わりたくないから、この人のお望み通りキスするのだ。