羽柴弁護士の愛はいろいろと重すぎるので返品したい。【番外編 2021.5.9 UP】
すると、先輩が驚く気配がして、私は唇を離そうとする。
本当にされて驚くくらいなら変なこと言わないでよ、と思った次の瞬間、頭の後ろを掴まれると、するりと舌が口内に入り込んできた。驚いて唇を離したかったけど、それは叶わなかった。
その間にも何度も角度を変えされるキスに翻弄されていると、先輩の左手は私の右手をゆっくり這い、指をからめとる。
その先輩の指の熱の感覚が妖艶で、今、キスしていることがやけに実感として沸いてきて、私は顔を真っ赤にした。だめだ、これ。まずい。私は、思わず思いっきり先輩の唇を噛んだ。
するとやっと唇が離れ、ちょうどエレベータが1階につく。私は先輩を睨むと、
「これで、あの時のことはチャラってことでいいんですよね」
と言って、くるりと出口に向かって走り出した。
「ほんとにするんだもん。驚いたなぁ」
先輩の楽しそうな声が後ろから聞こえる。
その瞬間、はらわたが煮えくりかえりそうになるけど、ぐっとこらえて、そのまま振り返らずに走った。
私はあの時から、いや、今でもずっと
―――羽柴先輩なんて、大嫌いだ!