羽柴弁護士の愛はいろいろと重すぎるので返品したい。【番外編 2021.5.9 UP】

 土曜の夜、店に着くと、店の評判は聞いていたが、非常に優美な佇まいの料亭で腰が引けた。こんなとこ初めてだ。
 ここ、一人いくらくらいするのかな……と思って首をふる。
 考えるのやめやめ。これ全部食べてもいいくらい、私、最近先輩のせいで大変なんだから! 副社長じゃなくて先輩に奢らせよう。そう、決意して、私は店に足を踏み入れた。


 案内された部屋に行くと、副社長が先に来ていた。先輩はまだのようだ。
 副社長は私を見るなり、

「昨日は、ほんとうにごめんね」
とまた頭を下げる。

 私は、いえ、と言いながら、つい目線をそらしていた。どうしていいのかわからない。
 でも、副社長のことは、ひどいとか、嫌いとか、そう言う風にはまったく思えなかった。

 少し二人で雑談していたら、足音が聞こえた。足音だけで先輩だと思ったら、本当に先輩がやってきた。
 いつの間に、足音でまで判断できるようになってるんだろう。

 そして、久しぶりに本物の先輩の顔を直接見ると、いろいろ思い悩んでいたことが一気に押し流された感覚があった。そして私はふいに泣きそうになって、唇を噛む。


(たった一週間じゃん。一週間会えなかっただけで、なんで泣きそうになってるんだか……。自分で自分が恥ずかしいわ……!)

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