羽柴弁護士の愛はいろいろと重すぎるので返品したい。【番外編 2021.5.9 UP】

 食べたこともない美味しいご飯にすっかり満腹になって、食事会が散会になった後、私と先輩は一緒に夜道を歩いていた。

「おいしかったですね。あんな高そうなとこ、私だけじゃもう一生行けなさそう」

 そう言ったとき、先輩が足を止める。私も足を止めて、先輩を見た。

「俺がいつだって連れてくよ」
「……いいですよ、もったいないし。普通のデートでいいです」
「普通って?」
「ほら、前のラーメン屋台とか」
「うん、あそこもいいよね」

 先輩は言い、続けた。「でも、結婚したら、パーティーや会食の場面も増えると思うから」

 その言葉に、自分の息が詰まったのが分かった。

 やっぱり結婚の話が出ると、私は躊躇してしまう。手放しに、そうですね、なんて返せない。
< 209 / 302 >

この作品をシェア

pagetop