羽柴弁護士の愛はいろいろと重すぎるので返品したい。【番外編 2021.5.9 UP】
食べたこともない美味しいご飯にすっかり満腹になって、食事会が散会になった後、私と先輩は一緒に夜道を歩いていた。
「おいしかったですね。あんな高そうなとこ、私だけじゃもう一生行けなさそう」
そう言ったとき、先輩が足を止める。私も足を止めて、先輩を見た。
「俺がいつだって連れてくよ」
「……いいですよ、もったいないし。普通のデートでいいです」
「普通って?」
「ほら、前のラーメン屋台とか」
「うん、あそこもいいよね」
先輩は言い、続けた。「でも、結婚したら、パーティーや会食の場面も増えると思うから」
その言葉に、自分の息が詰まったのが分かった。
やっぱり結婚の話が出ると、私は躊躇してしまう。手放しに、そうですね、なんて返せない。