羽柴弁護士の愛はいろいろと重すぎるので返品したい。【番外編 2021.5.9 UP】
先輩はいつだって優しくて、時々意地悪だ。
(『普通』って言葉、逆手に取らないでよ!)
「うぅううううう!」
「こら、唇噛まない」
「だって」
「うん」
本当は謝るのは私の方なのに……。
「ごめんなさい、酷い事言った」
「……なにが?」
「普通じゃないって……先輩のこと」
ひどい言葉を言っても、先輩相手だからって甘えてたのかもしれない。
後悔する私に、先輩は笑った。
「まぁ、みゆへの愛情の重さは人一倍だし、ちょっとおかしいのは自覚してるよ」
そして続ける。
「でも、これが俺の『普通』なんだ」
「……」
「みゆのこと独占したい、みゆのこと全部愛したい、みゆとずっと一緒にいたい」
先輩はまっすぐ私を見て、目を細める。
「みゆはどう思ってる?」
私は意を決すると、先輩の目を見つめ返した。
「私も先輩といたい」
「うん」
「……それに、普通に仲直りのキスもしたい」
そう言うと、先輩は少し驚いた顔をした後、すごく嬉しそうに笑った。
そしてその日は、抱き合えない代わりに、何度も何度もキスを交わした夜になった。