羽柴弁護士の愛はいろいろと重すぎるので返品したい。【番外編 2021.5.9 UP】

「なんで隠してたの?」
 私は思わず聞いていた。

「ママに隠してほしいって言われてたんだ。それがママとの約束だったから、必死で隠してたんだよ」
「えぇ……」

(ママ、なんてこと頼んでるのよ……!)

 そんなことを思った私を知ってか知らずか、父は苦笑して続ける。


「実は昔ね、小さい時、みゆが誘拐されかけたことがあって……」
「誘拐……?」
「うん。それで、事件とかそういう言葉に、すごく不安がった時期があったんだ。だから、みゆができるだけ忘れられるようにって隠すことにした。ただ、刑事っていうのはさすがに隠せないから、生活安全課ってことにして……」


「それいつの話? 私完全に忘れてるんだけど……」
「5歳。幼稚園の時だよ」
「……そう」

 しかも誘拐されかけただけで、何かされたわけでもないようだ。それが5歳のことなら忘れていても不思議ではない。実際今はきれいさっぱり忘れている。父と母の愛情のおかげもあるのかもしれない……。


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