羽柴弁護士の愛はいろいろと重すぎるので返品したい。【番外編 2021.5.9 UP】

 私が選んでいたのは、法廷コメディ。今話題なのだ。
 決して先輩を意識したわけではない。


 見終わった後、外に出ると、外はもう暗くなっていた。スマホをつけると、父から、『少し遅くなりそうだから、羽柴先生によろしく』とメールが入っている。

(何をよろしくするんだ、なにを!)

 そんなことを思っていると、
「面白かったね。コメディなのに法廷のシーンもなかなか迫力あった」
と、先輩が隣で笑う。
 そういえば先輩は裁判には慣れているだろうと、
「ああいった事、実際にあるんですか?」
と聞いてみた。

「あんな風になることはまずないけど、でも、心情としてはきっとそうなんだろうなぁって思ったよ」

 先輩は何かを思い出したように微笑む。その顔は、俳優が演じていたものより、何倍も弁護士に見えた。

「先輩って……やっぱり弁護士だったんですね」
「今までなんだと思ってたの?」
「うーん……なんでしょう」
「はは。そこで悩むんだ」

先輩は楽しそうに笑う。「ついでにさ、行きたいところがあるんだけどちょっとだけいい?」

 私は私で父に頼まれて、わざわざ来てくれている先輩に対して、ちょっとした後ろ暗さもありそれに頷いた。

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