羽柴弁護士の愛はいろいろと重すぎるので返品したい。【番外編 2021.5.9 UP】
6章:突然訪れた夜
―――あの時、どうして私、先輩の手を振りほどかなかった……?
いつのまにかもう金曜になっていた。
あれから毎日、あの日の夜を思い出しては、私は頭を抱える。
(なんど思い出しても恥ずかしい! 恥ずかしすぎる……!)
先輩にそういう『女の子の自分』を見せたことを非常に後悔していた。
だって今まで誰にもそんな自分見せたことない。未来永劫誰にも見せる気もなかったのに。
なのにあの時……。
私は不覚にもドキドキして、握られた手をどうしていいかわからずただ固まって。
でも、先輩に手を握られていることが、ちょっと嬉しくて。
そもそもそれが嬉しいって何よ。
おかしい。絶対におかしい……。
「あぁあああああ……」
小さくつぶやいていると、部長が来て、
「だ、大丈夫?」
と不審そうに言う。
「申し訳ありません。取り乱しました」
「そ、そう? 気分悪かったら言ってね」
部長はいつも優しい。
私は先輩のことを除けば、今の職場にもずいぶん慣れていた。最初は大手すぎるのですごく心配したけど、本当にいい職場だった。