羽柴弁護士の愛はいろいろと重すぎるので返品したい。【番外編 2021.5.9 UP】
その時、部長が書類の束を私に渡す。そして、宮坂さんを呼んだ。
「柊さん。これ、宮坂さんと組んで、教えてもらいながら引き継いで。宮坂さんの仕事、今、増えすぎちゃってて」
「はい」
私は戸惑いながら返事をする。
宮坂さんは悪い人ではないけど、かかわりも少なくてよく分からないし、羽柴先輩に関することはやっぱり少し苦手だ。だから、余計に身構えてしまうのかもしれない。
「よろしく」
「こちらこそ、よろしくお願いします」
私がぺこりと頭を下げると、宮坂さんといっしょに入り口付近の打ち合わせブースで業務概要を聞いた。ブースは人数が3名以下であれば簡易なスペースとして使える場所だ。4名以上の打ち合わせや会議では、会議室を予約して使用する決まりとなっている。
「それにしても、これだけの量を今までおひとりでこなしてたんですね……」
業務概要を聞いて、引継ぎには1か月ほどかかりそうだと思った。
宮坂さんはこれと同じようなものを5つ抱えているらしく、この一つでも精一杯の私は、宮坂さんを先輩として心底尊敬した。
それに、宮坂さんは物言いこそは少しキツいけど、仕事は真剣に取り組む人だと言うことを実感していた。私が勝手に色眼鏡で見てただけなのかな……。
「すぐ慣れるわよ。私もここにいるんだし、分からないことはすぐ聞いて」
「はい」
「正直、助かる」
そんなふうに言われて、私はほっとする。こんな自分でも役に立てることがあるようだ。
「ご迷惑をおかけないしように精一杯勤めます!」
「配属最初の挨拶みたいね」
宮坂さんが楽しそうに笑う。私もそれに笑って返した。たしかにうれしくて力が入りすぎた。
でも同時に、すごくほっとしていた。こんな風に笑い合える人がホウオウでもできそうで……。