まだ、青く。
私はルーズリーフを1枚出し、そこに"御手洗千"と大きく書いて人差し指でなぞった。


お願いします。

教えてください。

千先輩が想う人はどこにいますか?

どんな人ですか?

何でもいいんです。

兆くんのために情報を下さい。


「......あ」

「鈴のすけ、見えたのか?」


こくこくと頷いた。

私にははっきりと見えた。

千先輩の心を大きく占める存在は......

確かにあった。


「おい、誰なんだ?オレだった?」

「えっと...それは言えません」

「は?!勿体ぶるなよ!いるんだろ、好きな人!」

「いや、それが...人ではないようで......」

「......は?」


兆くんの罵声が突如生気を失った。

それもそのはず。

人じゃないって、言ったから。

じゃあ、なんなのか。

私には見えてしまった。

千先輩の心の中が...。

それはこの学校よりも大きくて

都会にあって

色んな人がいる場所......


「早野坂大学です」

「はっ......だ、大学......。マジ、か......」


千先輩は本当に行きたいんだ。

東京の良く分からない一等地にある大きくて有名なあの大学に。

そのために今は死に物狂いで勉強している。

だから、誰かを想うのではなく、

将来自分がいたい場所を想っていたんだ。


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