まだ、青く。
「あっ...」


私はまた前につんのめって転んだ。

やっぱり痛い...。

じわじわと痛みが広がる。

膝から真っ赤な血が滲み出る。

それでも、行かなきゃ。

昊さんに...

母に...

会いに行かなきゃ。

立ち上がろうと地面に手をつき、踏ん張ろうとした、その時。

ひゅーっと冷たい潮風が吹き、

それに乗ってやって来た香りが

私の鼻を刺激した。

爽やかだけどどことなく甘くて懐かしい香り...。

いや、でも、

そんなわけ......。


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