まだ、青く。
「こんなとこで何してんの?」

「えっ?」


今にもぼろぼろと溢れそうなほど涙を溜め込んだ瞳を私はその声のする方に向けた。

視界の真ん中に口元を緩ませる存在があって、奥には目映い光を放つ真ん丸の月が見えた。

月が彼を映し出す。

輪郭がぼやけたり、はっきりしたりを繰り返す。

私は何も言えなくて、

ただその温度に触れたくて、

月よりも近くて大きなその存在に

手を伸ばした。


「凪くん...」


凪くんは私の手を掴んで、その勢いのまま、私を大きな胸の中に連れ去った。

私はその香りを吸い込んで噎せ返り、大声を上げて泣いた。


「大丈夫。誰も聞いてないから」


凪くんはそう言って私の背中をさすってくれていた。


どれだけ自分はちっぽけなんだろう。

どれだけ自分は愚かなのだろう。

どれだけ自分は浅はかなのだろう。


思いだけじゃどうにもならないのに...。

そんなの自分が1番良く分かっていたはずなのに...!

どうして?

どうして...?

どうして...?!

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