瀬川くんのジャージ
「私だって、手抜いてない!全力の結果だよ!」
と、ついムキになってそう言うと。
「わかってるよ」と、涼くんが初めて、笑ってくれた。
少し眉が下がり、目が細くなる。
その笑顔は爽くんとそっくり。
あ、だけど。
「涼くんは、えくぼ、右だけなんだ」
「なっ…」
そんなところまで観察されたのが恥ずかしかったのか、左手ですぐに口元を隠されてしまった。
なるほど、涼くんは照れ屋さんか。
「ねえ、半袖寒くないの?」
また気まずい空気になっても困るので、話を変えようと、そう聞くと。
…耳まで赤くなってしまった。
この質問のどこに、照れる要素があったのかと、首をかしげるもわからない。