瀬川くんのジャージ
「…それ、着て?」
と目の前の彼が言う。
目は合わないけど、間違いなく自分にかけてくれた言葉だとはわかる。
すぐに反応できないでいると、「じゃあ」と去って行くように背を向けたので。
「待って」と。
すかさず制服の端を掴む。
「あの、ありがとうございます!」
と言い、服から手を離すと。
「じゃあ、また」
と、初めて目が合ったと思ったら。
少し照れたような、えくぼが特徴的な笑顔で。
なんだか、それが妙に心に焼き付いた。