瀬川くんのジャージ
「あんな焦った涼初めて見たんだけど」
「え、焦ってた?
体力測定の結果いいねっていうのと、半袖だねってそれだけだよ。」
そう言うと、爽くんは「ふーん」と何かを納得したように頷く。
えー、なになに。
どういうこと?と聞こうとしたが、気にしないでとはぐらかされてしまった。
「そろそろ掃除終わるかな?」と教室を覗きに行こうとするので、制服を掴み、呼び止める。
「あの、さ。
…入学式の日ジャージ貸してくれたのって爽くんだよね?」
私からの思わぬ言葉に爽くんは一瞬固まる。
でも確信がある。
あの瀬川くんは、両頬にえくぼがあった。