瀬川くんのジャージ
「なに、してるの?」
私たちのいるスペースの廊下側から、少し微笑みながら顔を出した人物に息を飲む。
田中さんは慌てて上げていた手を下げる。
「えっと、爽くん?」
「なんでもないの、飲み物を買おうとしてただけで。」
と田中さんと上戸さんは頬を赤くする。
でも、彼は。
「…っ涼くん」
緊張の糸が切れ、つい涙ぐむ。
そんな私を見るなり、田中さんと上戸さんを押し退け、目の前まで来ると背を向け、優しく自分の後ろに隠してくれる。